夫が亡くなり、そのまま一緒に暮らしていた自宅で生活したい、同居していた親が亡くなりそのまま家を引き継ぎたい、という相談は多くあります。
ご自身の生活に不可欠な不動産であり、そのままの生活をしていきたいという希望はよくわかります。
まずは相続人間での話し合い
例えば、夫が亡くなり妻がそのままその家で生活したいという場合などは、相続人間での話し合いで、例えば子が不動産を取得し母がそのまま居住する、母が取得し代償金は不要とするまたは金額を低くするなど、話し合いで解決を図っていくことが重要です。
ただ、相続人間で感情的な対立がありそのような話し合いができない場合、夫がなくなり子がいない場合に相続人が兄弟や兄弟の子などに及び話し合いが困難なこともあります。
このような場合にどのように不動産を守っていくかがポイントになります。
代償分割
上記のような話し合いがつかない場合は、不動産を単独で取得し、代償金を支払うことが考えられます。
たとえば、遺産として、不動産の価値が2,000万円、預金が500万円で相続人が妻と子が2人だった場合、法定相続分に従えば、妻が1250万円、子が各625万円となります。この場合に妻が不動産を取得すると750万円を超過して取得することになり、子どもたちに各375万円を代償金として支払うことになります。
このケースでは、預金だけでは代償金分に足りませんでしたが、仮に預金が1250万円以上あれば、預金での調整が可能となります。このように預金の金額次第で代償分割によって調整しやすい場面かがわかれます。
不動産の評価
不動産の評価をどうするかも検討の必要があります。不動産の評価は、公示地価、固定資産税評価額、路線価、実勢価格などがあります。詳しくは以下のとおりです・
①公示地価(土地の場合)
国土交通省が毎年3月に公表するその年1月1日時点における全国の標準地の土地価格を公示するものです。取引の指標となり、固定資産税評価額、路線価のもとになります。
②固定資産税評価額
固定資産税評価額は、不動産が課税対象となる際の評価額を指します。固定資産税は、毎年1月1日時点での不動産の評価額に基づいて計算されます。公示地価の70%程度が目安とされています。
③路線価(土地の場合)
路線価は、路線(道路)に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額のことであり、路線価が定められている地域の土地等を評価する場合に用います。
④実勢価格
市場価格のことです。実際に売買されたとすればいくらで取引されるかということです。不動産の評価は、相続においては実勢価格によることが原則です。しかし、何をもって実勢価格とするかは難しく、実務的には複数の不動産業者の査定を取得したり、土地については、固定資産税評価額÷0.7、路線価÷0.8などして解決していることが多くあります。ただし、不動産の種類、場所によっては、不動産鑑定士の鑑定によることもあります。
寄与分の主張
被相続人と同居していた場合は、療養看護に努めた場合や、家業のために尽くしたなど寄与分の主張ができる場合もあるでしょう。
寄与分とは、遺産の維持形成に「特別の寄与」をしたと認められる場合に法定相続分を修正する制度です。このような主張もしていき、合意点を探っていくこともあり得ます。
遺言を作る必要性
このような問題を避けるには、まず遺言書を作成しておくことが何より重要です。具体的状況からどのような遺言書を作成することが必要か、その問題点は何かを検討し、遺言書を作成します。 相続は事前の準備で紛争を解決、紛争を少なくすることが可能です。そのためには遺言書を活用すべきです。ただ、自筆証書遺言の内容次第でさらに紛争を招くこともあります。遺言書を作成する場合は、専門家のアドバイスのもとに作成しましょう。