1 遺産に不動産がある場合
遺産に不動産がある場合には、そのままで共有関係になるため、誰かが単独で取得し、他の相続人に代償金を支払う、売却して売却代金を分ける、とすることが多いでしょう。相続人の一人が単独で取得するとしても、その評価が問題となったり、既に共有関係が生じている不動産であったり問題は多くあります。
2 不動産の評価
不動産の評価には以下のような評価方法があります。
①公示地価(土地の場合)
国土交通省が毎年3月に公表するその年1月1日時点における全国の標準地の土地価格を公示するものです。取引の指標となり、固定資産税評価額、路線価のもとになります。
②固定資産税評価額
固定資産税評価額は、不動産が課税対象となる際の評価額を指します。固定資産税は、毎年1月1日時点での不動産の評価額に基づいて計算されます。公示地価の70%程度が目安とされています。
③路線価(土地の場合)
路線価は、路線(道路)に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額のことであり、路線価が定められている地域の土地等を評価する場合に用います。
④実勢価格
市場価格のことです。実際に売買されたとすればいくらで取引されるかということです。
→不動産の評価は、相続においては実勢価格によることが原則です。しかし、何をもって実勢価格とするかは難しく、実務的には複数の不動産業者の査定を取得したり、土地については、固定資産税評価額÷0.7、路線価÷0.8などして解決していることが多くあり
ます。ただし、不動産の種類、場所によっては、不動産鑑定士の鑑定によることもあります。
3 不動産の売約
不動産を売却して、売却代金を分配するという方法もあります。この場合は、具体的な分配が決まり、相続人間の足並みが揃っていなければ、スムーズな売却をすることが困難です。例えば、法定相続分以外に寄与分や特別受益の主張がある、被相続人の生前に立替金の支出があるなど。しかし、不動産が残ったままだと、不動産の管理に関する費用など無駄な支出が増えてしまいます。双方に代理人が入っていれば、協議内容を調整しながら、売却を先行させる場合などもあります。また、譲渡所得税の申告などの検討も必要になります。
4 不動産を単独で取得し代償金を支払う場合
不動産を相続人の一人が単独で取得し、他の相続人に対して、相続分を超過して取得した分を現金で支払うことで解決することがあります。 問題は、遺産の中心が不動産で、その他の資産が少ない場合に、不動産を単独取得した相続人が代償金の支払いができるかです。単独取得した相続人が現金を保有している場合は問題ありませんが、そうでない場合は、生命保険金や借り入れなどでまかなうことになるでしょう。
分割支払いなどで合意することもあります。それでも不足する場合は、単独取得を断念し、売却に移行するしかありません。ただ、売却を拒否する場合もあり、審判に移行し、強制競売をするなど手続が長引く恐れがあります。
5 数次相続の場合
祖父母が亡くなり、遺産分割をしない間に父母が亡くなるなど、相続が複数にわたる場合を数次相続といいます。この場合は、全ての遺産分割を行う必要があります。数次相続の場合に問題となるのは、相続人が多数に上ることがおおいことです。相続人が多くなると、相続人全員での協議が非常に難しくなります。相続人の何人かと連絡がつかない、そもそも所在が不明というケースもあります。
このような状況になると、相続人だけで解決するは困難であり、早急に専門家への相談が必要でしょう。